読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

underneath/

オリジナル獣漫画描いたり、スターフォックスだったり、映画だったり音楽だったり

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

EYES WIDE SHUT/5 

      この国の大きな瑕疵

 

 

 

 

 コーネリア軍、東部カタリナ基地。カタリナ東部戦闘宙域より帰還したグレイ小隊は、局長に呼び出され驚くべきことを耳にした。

 

「だーかーらァー、今回はァー、企業が雇った民兵組織同士の争いだから軍の管轄じゃないっていってんだろー」

「しかし局長ォッ!どうみてもあれは違法な宙域戦ですよ!?治安維持部隊は戦闘機を完備してないし、あれを野放しにしていいわけがないでしょう!どれも認証されてない機体で完全にスターウルフの仲間でしたし!五艇会も全滅してた!明らかにヤクザの抗争じゃないですか!」

 

ビルが大汗をかきながら説得するとも、局長は耳を塞いで知らぬ存ぜぬを決めていた。タケルスたち部下もこの態度に驚きが隠せない。

 

「民間人の犠牲者でてないしなァー、宇宙戦は航空法にひっかかるにしろ、ぶっちゃけコーネリア政府も管轄領空をどこまでとかそういうの定めてないしさー。治安維持部隊が宇宙いけない時点で決めようないけどさー」

「だから全惑星は防衛軍に統一されてるんでしょうがッ!治安維持も軍人の仕事ですよ!!」

「えぇーどこからどこまでも抗争とするのかだよなー。だってほら、この前スターフォックスと楽しそうに腕試してたじゃねえかぁ。訓練の一環とかでもねえし、お前さんがいう航空法にゃ厳密にいうと違反してんだ。ケンカか抗争かって、曖昧すぎっからなんともいえねえんだよなァー。裁判所持ってく?もってくならおめえやれよー」

「っでもあれヤクザですよ!?民事介入暴力だ!」

「民間人の死者でてねえし結果オーライじゃーん。しかもあれヤクザじゃねえって。KSAとデフトーンズ地所の雇った民兵集団だってば。」

 

あくまでも局長は譲らないらしかった。

 

「要するに、拳願試合ってやつじゃね?」

 

ーーー局長…なんか受け取ったな…

 

意地でも曲げないところを見ると、心がうっすらと形になって現れる。眼帯をしていてもだ。確実に、どちらかの企業が関わっている。

呆れた様子でグレイ小隊が出て行くと、彼のあては大当たりだったようだった。すこし罪悪感を持ちながらも、局長は書類を引き出しからだした。頭をかきながら、口封じのための金額を見る。

 

「そりゃーなぁ…防衛軍より武器持ってるとこと、あのスターウルフがお友達じゃあ、無敵じゃんねぇ…。核でもぶちこまれちゃぁいくら軍でもシャレになんないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 五艇会本部は、いよいよ佳境に迫っていた。

3階から両手をガトリングガンに変形させたパッカーが、冷たい目線で全ての部屋に潜んでいる輩を撃っていった。逃げ場をなくした舎弟達が、おいまくしたてられていく。

 

『クリア。』

「了解。H20、最後の部屋だ」

 

アカツキの隣、ウルフが答える。撃たれた箇所の痛みはさらに強くなり、じっとりと体に汗をかき始めた。

 

「貴様の能力は何のためにある?」

「…な…何て」

「銃槍くらい焼いて塞げ。」

「冗談はやめろ、無理だ」

「なら撃たれるな」

 

レオンがぎろりとした目で彼を凝視する。その威圧感に押され、アカツキは血の気を弾かせつつも、手に熱を溜めた。セリヌとラナが後ろで不安そうな顔をして覗き込む。

鳥肉が焼けるのに近く、不快感を催す臭いが充満する。血がこびりつき、バリバリになって服にこびりついた。歯を食いしばり、ビリっとくっついたシャツを剥がすと、痛みが弱まったようで肩で息を始める。

 

「やるじゃねえか…。おっと、撃たれようが焼くのはゴメンだぜ…」

 

パンサーもニッと笑っていたが、そのグロテスクな光景に冷や汗をかいていたらしい。赤外線で透視しながら慎重に進むと、もぬけの殻になった階段でパッカーと合流した。

 

「生きてたか。」

「そりゃあ、死ねねえからな」

 

レオと顔を見合わせると、スターウルフのメンツの後衛にたった。後ろに立つセリヌが何かに気づき、分電盤と見られるアルミの扉を開けた。

 

「セリヌ、なにやってる」

「電気系統がここに集中している。奥はみたところ居住空間ですが…」

「…なるほど。」

 

赤外線ゴーグルでやっと確認できる範囲で、白い四角い物体が見える。ウルフは鬼畜の顔をして、ニヤッと笑った。

 

「ラナ、セリヌ。ここを張れ。合図したら、そいつをぶっ壊せ」

「…了解」

 

ラナは察したらしかった。いよいよ、五艇会は袋小路である。中にいるのは30名を超えている。マレイドの姿を確認すると、流れ弾があたらぬように緊密な手段がウルフによって指示された。

奴らもこちらの動向をすでに見切っている。壁を背中にして、50メートル先にあるドアの向こうはホットゾーンだ。

合図をされ、パンサーが手榴弾のピンを抜き、ドアの前に転がした。

 

「突入!」

 

爆発とともに扉が吹き飛ばされ、同時にあちらから激しい銃撃が一挙に押し寄せる。目くらましにもなる手榴弾であり、光や影も察知できない黒い煙が押し広がる。非常に長く空気中にとどまり、敵陣からの攻撃は全くと言っていいほど当たらなかった。

透視のきくゴーグルでしか動けない中、敵陣を次々と崩してゆく。暗黒のカーテンのなか、恐れることなく6人は突入した。

銃弾の嵐のなか、逃げ場のない四角の部屋だろうが攻撃は止むことはなかった。相手は軽装備だというのに、一歩も引くことはない。決死の覚悟でこちらへ特攻してくる様子が、なんとも気味悪く見えた。

 

24、18、と数は大きく減っていく。やがて、女の声が「攻撃停止!」と声をあげた。同時に、スターウルフ側も攻撃を止める。交渉へもっていこうとしたのか、もうこれ以上死者を増やすことはしたくなかったらしい。

 

「姐さん!そんな!」

「やめろっていったら止めんだよ!あんたらが忠義のために死のうが、なんとも思っちゃいないんだよ!いいからやめな!」

 

初めからこの組には悲壮感が漂っていた。組員がまるで組のために死ぬのが幸せともいわんばかりの言い方に、何度も耳を疑った。ウルフは前に出て、捨てて両手をあげるように言うと、ゴーグルを首に押し下げて顔を見せた。

 

デフトーンズは逃げた。これ以上協力してくれる輩がいねえからだろう。」

「わかってるよ、そんな事…」

「なら作戦をなぜ実行した。そのカスみてえなプライドか?」

「…そうだけど?これでも随分減ったもんだよ。逃げたきゃ逃げろって、あんたみたいに説得しようとねぇ、どいつこもいつも殺されについてきた。」

 

ごろごろと転がっている屍体は、いま生き残っている組員にとっての仲間だったのだ。中には情熱的に涙ぐみ、下を向いている奴もいた。

 

「組のために死にたいって、さ。安い命をいくら散らそうがアタシは何も変わっちゃいないってのにね…」

「ただの自己満足だろうが」

「結局はそうだよ。死にたがってんだから、どっちにしろ終わりは早いほうがこいつらのためだと思ったんだよ」

 

すすり泣きが増える。隣でマレイドは特に乱暴された形跡もなく連れ去られた時の格好のままである。さらには同情するような潤んだ瞳を松島に向けていた。

 

「あんたと同じ考えだよ。だが可愛い我が子についてこられちゃ、見捨てるわけにはいかねえだろう?」

 

松島はマレイドを強く引き出し、背中をどんと押した。ウルフが前に出ようとするが、マレイドは彼女を振り返って見つめたまま、動こうとしなかった。一体彼女にどんな心変わりが起きたのだろうか。

 

「なんでこの惑星の奴は、死にウェイトを置く。敬っている目上の奴のために生きるのではなく、死ぬことの方が美しいってか。理解できねえ」

「卑怯者として生きるくらいなら、勇者と称えられ死ぬ方がマシ。生き恥かくくらいなら腹を切って死ぬし、同士も死ねというだろう。ここはそういう国だ」

 

アカツキは運良く一人空襲から逃れた後、誰も生還を喜ぶことなく、両親や友人を見捨てたとひどく批判された。心を閉ざした彼は、地元と縁を切るとともに、重たい刃でかつての知り合いや友人たちを殺した。

 

「でも誰も裏切らなかった。死ぬまで、組を見ていてくれた。」

 

誰も裏切ることはない。松島はニコリと笑い、ウルフにそっとこういった。

 

「あんたのとこは、どうなんだい?」

 

銀色の眉をひそめ、ウルフは黙った。

すでにピグマとオイッコニーはその場限りの付き合いとして割り切ったが、今では敵に回ることも少なくない。隣にいるレオンもパンサーもパッカー達、そしてサタイアも、いつ手のひらを返し牙をむいてくるかわからない。

しかし、微塵に不安に思うことはなかった。

 

「それがスターウルフだ」

 

裏切り、殺し合い、代謝して強くなる。疑いを持ちながら共闘関係を組む、それがあるべき姿だとウルフは言い切った。松島は大きな目を細め、「ふぅん…」と興味深そうに微笑んだ。

 

「降伏しろ。腹を切りたきゃここで切れ。死にたくてついてくるザコは手間だ。KSAからの命令はこれで完了する。」

「…デフトーンズはどうすんだい」

「お前んところの、オダワラだかがうちのガキをつれていってる」

「小田原が…!?一体…」

 

その頃、カイルの乗る小型ヘリがデフトーンズのダニエル・カートマンの乗る車に目をつけていた。三白眼でにいっと笑うと、操縦席のタヌキが様子を伺いながら窓を開けた。彼は、アカツキとラナとカイルが捕まっていた高速艇のパイロットだった。高度を下げると、機関銃を慎重に構えた。

 

「今頃…五艇会が報復攻撃をしかけたことになってんだろう。ちなみに、あいつはキチガイだ。」

 

攻撃をする様子がないことで、ウルフがタバコに火をつけ、武器を下ろした。窓の外をみる。カイルは一気に砲撃をし、一気に道をそれ車は衝突した。カイルはワイヤーを使って下に降りると、腰を抜かしてはじき出されるカートマンを取り押さえると、ワイヤーでぐるぐる巻きにして連行した。ニヤニヤと笑う悪魔が、仰天する彼をひと殴りした。

 

「ヤクザを使い慣れてない奴がどうなるか、じきに見せてやる」

「…!…!」

「今、外の分電盤で仲間が控えている。生命維持装置をきりここで旦那を殺すか、俺についてきて旦那をICUにいれるか、選べ」

「ッ…どうしてそれを…!」

「とうの昔に小田原が吐いた。いくら御託を並べようが、俺にはお見通しだ」

 

マレイドの横を素通りし、ウルフは松島の顔に煙を吹きかけた。彼の体格に、ついに松島は目に恐怖の色をにじませた。

 

「所詮、未亡人だな。」

 

スカートをたくし上げようとすると、パッカーがうしろから義足を吹き飛ばした。悲鳴をあげて地面に崩れ落ちると、もう片方の義足も弾け飛んだ。漆の美しい光沢が光り、散らばっていく。破片を拾い上げ、表面をじっと覗く。

突然キレた舎弟ががむしゃらになってウルフに飛びかかろうとした。だが、アカツキがとっさに銃口をあげて撃ったのが当たり、息絶えた。

 

「降伏する!!!!」

 

松島は叫んだ。すると、マレイドは横に寄り添うように抱き、ウルフを見上げた。全員は驚愕した。そっと銃口をさわり、下へ下ろさせると、涙をながして肩を抱く。

 

 

 

こうして、全ての戦いが収束した。

 

 

 

 

ーーーーーー

 KSA、73区工場。製造工場は、立ち退きが行われるとして全面休業した。デフトーンズの雇った民兵に攻撃される可能性もあるため、避難させている。

がらんとした屋内に、タオはコーヒーを飲みながら状況をチェックしていた。ウルフ達に渡したゴーグルやデバイスは、随時送信されている。会話内容もしっかり耳にしている中、松島が降伏したのをみて、安心したように笑った。

フユコがドアをあけると、一足先にカイルが男を連れてやってきた。ボコボコにされて無残な顔になったカートマンが、虫の息で佇んでいる。

 

「ゔうー…ブフー…ヴー…」

「話し合いもなしに推し進めようとするのは非常に困りますよ、ダニエル・カートマン部長。」

「す…すまなかった…」

「カタリナをコーネリアより格下だと思って、傍若無人に振舞うのはよして欲しいものですな。はたまた、それがコーネリア人の作法ですかね?」

「先手を打ったのはヤクザを雇った貴様らの方だろうがオラァ!いつお前らKSAに攻撃したっていうんだ!」

「70区を支えているのは我々KSAです。その土地、文化、人々を享受する限り、破壊する異分子から守らなくてはなりませんのでね。」

 

勝手な地上げを行い、不当退去を推し進めてきたのはデフトーンズだった。労働力と埋蔵資源、生産力すべてをカバーしているので、実質KSAが所有しているも同然と考えているらしかった。

 

「あまり強欲なことは言いたくないが、…あの土地、住んでる人々、治安維持部隊、埋蔵資源、そのすべては…我々KSAの物だ。人民を敬い、対等な取引で開拓したその歴史を、貴様ら蛮族企業に侵されてたまるものか」

 

細くつりあがった切れ長の目を見開き、カートマンを睨みつける。警戒心を与えない四角いメガネの底からは、果てしない百戦錬磨の気風を漂わせた。ウルフと対等に渡り合えるこの男は、一体何者なのだろうか。

 

「ヤクザのクズどもがァ…」

「えぇ、それは認めます。ひどい扱いをしたとは思いませんかな?しかも、ひどく舐めた真似をしたそうで。今やヤクザは企業に頭下げる存在でしかありませんが、奴らは気性が本当に荒い。気をつけないと本当に痛い目を見ますよ。もうお分かりでしょうが」

「目的はなんだ…もう…手を引くぞ…!」

「和平案ですよ。よろしければ、ぜひあなた方の企業と提携したいのですが…。そうですね、資料をお持ち帰りいただいて、後日我が社の社長ともお話をできればとおもいますよ」

 

タオが手をひらひらすると、カイルが頷いて笑いをこらえながら奴に近寄る。フユコは汚物を見るような目をしたあと顔を隠した。カートマンはカイルにズボンを引き摺り下ろされ、ついに吹き出して笑いが止まらなくなっていた。

 

「ご安心ください、KSAはスターウルフとは違います。あなたは生きて帰れますよ。」

「や…やめろ…!なにをする…!やめろ!!」

「帰りの飛行機もご用意いたしましたので、無事にお送りします。」

 

自尊心を破壊して帰す算段だった。

 

 

 

 

 

 

 翌日。昼飯をご馳走するといって、高層ホテルレストランにスターウルフとサタイアは招かれた。汚い服を着てくるべからずと釘を刺され、急いでその辺で買った服を着込み出席した。

入り口ではフユコと社員達が出迎え、大きな丸テーブルの席に案内される。タオが立ち上がり、明るい笑顔でうれしそうに労ってくれた。

 

「やあやあサタイアの諸君!本当に素晴らしい働きをしてくれたものだね。アカツキくん、カイルくん、レイくん、君たちの故郷もしっかり守られたぞ。まさに英雄だ!」

 

調子よく肩を叩いてくれるタオは印象がよかった。ウルフ達はもう一つのテーブルでパッカー達としゃべっており、先に酒を飲んでいる風だった。サタイアは着席する。アカツキはふと、ウルフ達の席が余っているのに気がついた。

 

「なんせ無事でよかったなー。」

 

カイルが呑気に水を飲んでいる。そういえば、とセリヌが思い出して彼を問いただす。

 

「ダニエル・カートマンを始末していたらしいな。」

「あー、うん。タオさんがお咎めしたあと、生きて帰らせたぞ」

「…え…!?」

「おっと!ここからはタオさんとの約束だからさ、秘密な!ブッ!ククククッ」

 

思い出し笑いをしているカイルを前に、メンバーは騒然としていた。あれだけひどい所業をしておきながら、生きて帰すという選択に納得がいかなかったからだ。お咎めの内容を聞くも、カイルは秘密を通し全く口を開かなかった。

 全員揃ったはずだが、タオはまだ始めるつもりはなかったようだ。たまたま目に入ったウルフの動きが止まり、その視線の先に目を移した。タオがニッコリと笑い立ち上がると、歩いて行って二人をテーブルへ案内した。

 

「姉ちゃん…」

 

華やかなワンピースを着込み、化粧を施されたマレイドが、車椅子の松島を押してやってきた。椅子のないウルフ達のテーブルにつけられると、その隣に座った。タオは全員揃ったのを見ると、手を二回叩いて注目を集めた。

 

「いやあ、みなさん。この度は本当にありがとう。報酬はきちんと振り込んだし、テーブルの上の領収書をご確認いただければ幸いだ。」

 

アカツキは手元の封筒をあけると、その桁数の大きさに目を疑った。

 

「ウルフ、君と友人であることを改めて誇りに思うぞ。」

「タオは羽振りがいいからな。」

「そりゃよかった」

 

料理が運ばれてくると、松島とマレイドのところに近づき、説明をした。

 

「五艇会は、我々と組むことになった。平時の護衛は彼女の舎弟に頼むことになる。マレイドちゃんは、松島さんの世話役として働くことにもなった。」

「もう舎弟もいないし壊滅状態じゃねえか。高速艇も残りが少ない」

「兵の確保はもちろんKSAが行うぞ。武器や戦闘機など、残りの面倒は我々が面倒を見る。同じカタリナを支えてきた同士だ。助けあわねばな」

 

松島は本当に複雑そうな顔をして、伏せた視線を変えることはなかった。横に控えるマレイドは不安そうな顔を拭えなかったが、パンサーに質問を飛ばされる。

 

「人質として取られた君が、どうしてこの人をここまでかばう。」

「…わたしは、人質としての価値はなかった。それだけです…」

 

上等な化粧品で輝く瞳から、松島に手厚く保護されていたのが丸分かりだった。若いころから下半身が義体である松島には、到底子供がいるとは思えなかったからだ。なにか複雑な心境があって、マレイドを求めたに違いない。そう確信した。

 

「さ、話も丸く収まって、カタリナにも平和が訪れた。今日は私がおごることにする!好きなだけ食べ、好きなだけ飲んでくれたまえ!」

 

不穏な空気を振り払うように、明るいタオの声が響き渡る。酒をもちあげると、波及するように全員の腕が上がり、席を立つ。乾杯の音頭を取り、久しぶりの大仕事に歓声をあげた。

 

「乾杯!」

 

ワンテンポ遅れ、「乾杯」と全員で繰り返すと、祝杯を一気に飲み干した。

彼らの世界では通常ありえないような贅沢のしかただ。これからも、KSAはスターウルフとの協力関係を続けることだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

EYES WIDE SHUT/エピローグ

 

 

 

その日の晩、タケルスは夢を見ていた。

 

ーーーこうなること位、承知の上だったんだろう。死ぬ前に何か言うことはあるか?

頬まで刺青の入った、赤い毛の凶暴そうな男が、年を食ったウルフの額に拳銃を突きつけている。

ーーー当たり前だ。俺だってそうやっていくつも腐肉を喰らってきた。ここは力の世界においては…その椅子取りゲームのルールは、何も間違っちゃいねえ。

ーーーそれでこそウルフだ。あばよジジイ。

ーーーこうなるだろうと思ってた。お前は俺に似てるからな。

赤毛の男はけだるそうに目を細め、タバコをとって煙りを吹かす。踏んで消すと、大きな手をポケットの中にしまった。

ーーー猜疑心が出発地点。あとは殺して殺して殺しまくる。無責任に屍体を増やしまくって、燃やし、力ばかりを伸ばしていく。頭はだんだん空っぽになり、倫理のリの字も忘れちまう。

ーーーそれが俺の生きるための答えだ。間違っちゃいねえ。殺すために考え、暇をつぶすために儲ける。自分より強い相手を楽しみのためにつぶす人生だ

ーーーそうして無駄なものをそぎ落としてきたせいで、お前は最強最低最悪のクソ野郎になった。腕と頭の力だけで支配した世界は、情なんてものは存在しねえ。よかったなアカツキ、お前が作った世界は、完璧な合理性で成り立ってるぜ。

 

その末恐ろしいアカツキの瞳に、背筋に悪寒が走り飛び起きた。これが変わり果てた親友の終着点であることも。

 

なにかの拍子に、未来が変わってしまったのだった。